天国の一歩手前ふと目が覚めた。
うっすらとした視界に、シーツの白、自分の双肩を包むしなやかな腕が伸びている。
気づけばぴったりと合わせられた体と体。甘い余韻が広がって胸をくすぶる。
背中に感じる暖かさを頬で感じたくて、重い体を反転させた。そしてその温度に顔をうずめる。
シーツと彼に閉ざされて、このままじゃ窒息するのは明らかなんだけど。
うん、ここでなら死んでもいいな。
あなたの肌と、鼓動、においを感じながら死ねたなら、どんなにいいだろう。
薄暗い、けれどほのかな明るさが、1日の始まりが近いことを告げる。小鳥の声すら、まだしない。
恋は病って聞いたけれど。
このままずっと、ずっとこうしていたいって。
朝なんて来なければいいのにと思うなんて、僕はもう末期なんだろう。
そうさせるこの男が恨めしい。
ああ、と一人ごちる。
あきらめて、朝食でも作ることにしよう。
ちょっと手の込んだものを作って、この人を喜ばせてあげよう。
食べることに無頓着で、ともすれば何も食べようとしないあなたの為に、栄養のつくものを。
結局僕はこの人に甘いのだ。
ベッドから出ようと体を離そうとしたら、伸びていた腕に引き寄せられた。
「もう、ちょっとだけ。」
しっかり抱き込まれて、いよいよ息が苦しくなる。
多分この人が力を入れすぎているせいだ。本当に僕を殺す気だ。
でも僕の顔に広がるのは抑えられないくらい満面の笑みで、それを感じ取った彼が僕の髪をやさしく撫でる。
それが気持ちよくて、僕は魔法にでもかかるみたいに再び眠りに落ちていった。
この人がくれるだろう1日について考える。
昨日のことを思えば頭が痛いし、今日のことを思えば気が重いけど。
きっと素敵な1日になるんだろう。
今日も、明日も、ずっと、ずっと。
それなら、僕はまだ死ねないよね?
「死ぬところだった。」
日も高らかに昇り、起きなきゃ本当にやばい時間になって言ってやった。
彼は黒髪を掻きあげながら、困ったように笑う。
あなたが僕を離さなかったから、今日もありきたりな朝食を作ろう。
また、これ?とか言ったら、おたまで殴ってやろう。
誰のせいだって。
ベッドの上で寝転んで食事を待つ彼はにこにこしてる。
そして。
ありきたりな朝食を食べたあなたは、「おいしい。」
ああ、ほらね。
あなたに関して、僕はなんて病的。
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