おもうところはひょんなことから猫を拾った。
拾ったといっても飼うわけでもなく、名前をつけて、時々エサをやる程度。
「クラウド。」
間違いが起きるといけないが、これ猫の名前。
いろいろ総じてクラウドにそっくりなもんで、名前を勝手に借りちゃいました。
これ、当の本人には内緒。
路地裏からひょっこりと顔が覗く。この淡い金色、つんつんした毛並。
狩りが下手でいつも空腹、そんなコイツにエサやってるのは俺くらい。
「そらよっと。」
干し肉を投げると見事キャッチして即、隠れる。青い眼がじろり。愛想なし。
「お前、そんなだからこんなにちっこくて細いんだよ。しっかり食っとけ。」
無視。まあ、いつものこと。
「俺しばらく遠征なんだ。1週間くらいかな。」
食事中は食うことに完全集中。ここでなでなでしたいところだが、触ろうとしたら毛を逆立てて怒られる(すごくこわい)ので、しない。
「俺が帰ってくるまで、いい子してろよ?」
クラウドはエサを食い終わるとさっさと姿を消した。薄情!と笑う俺。
路地の奥で、にゃあ、と小さく声がした。
ふと、あっちのクラウドもこの話したときはえらく態度が冷めてたっけか、と思い出す。
「そう。」って、一言だけ返事返して。・・・あの猫、そんなところばかり似てくるなあ。
仕方ないヤツらだよな〜、なんてつぶやきながら帰路につく。
まあ、いつも通りに。すぐ、帰ってくるから。
ぼんやり、くもった空を探す。
次の日にはグッバイミッドガル、こんにちは戦場。
遠征は意外と長引き1ヶ月かかってしまった。
よろこぶべき帰省の日は、まさかの雨天。
その雨が、刺さる。
なあ、クラウド。
生きていける、なんてことなかったんだ。
でも、なんてことなかったんだよ、生きていくためには。
ばかなヤツ。
全身が、冷えて動かない。走り続けてたから動悸は激しいのに、頭に血が巡らない。
冷たい雨に、ぬかるみ。泥だらけの俺の足、その数センチ先に沈んだお前の体。
なにからなにまで、全部がぐしょぐしょ。
甘えたがってるのに、それができないでいること。
俺が離れるとき、少し淋しそうにしていること。
気づいてた。
でも、手を伸ばさないでいたのは、それでもいいかなって。ちょっとずつでいいかなって。次があるかなって。
思っていたから。
気づくのが遅いよ。
いつも、クラウドにそう怒られていたじゃないか。
ああ、ばかなのは、俺。
「ちょっと、なに、アンタ。」
きれいな顔がしかめっつら。
帰宅した泥だらけの俺に、嫌悪感丸出しな俺の思い人。
かまわず抱きつく。クラウドはびっくりしたみたいだけど、逃げなかった。
「ねえ、俺、風呂あがりだったんだけど。」
どおりでいい匂い。
「こんなに冷たくなってさ。またばかしてたんだろう。」
うん、そうなんだ。でも、声がでない。
ため息つきながら、俺の後頭部をなでてくれる。
あやすように、汚れた俺を抱きかえしてくれた。
「ばかザックス。」
しばらくして、ようやくクラウドの温度が染みこんできて、手足に感覚が戻ってきて。
すごく、コイツが、あたたかくて。
なんだか、もう、どうしようもなくなってきて。
俺はそこで、はじめて泣いた。
「帰ってきたよ、いい子してたか?クラウド。」
ぽっこりとふくらんだ土にいつもの干し肉を供える。
知り合い介して得た「クラウド」の安息の地は、あたたかい陽だまりの花咲く場所。
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